高温X線回折装置(高温XRD)
主な用途
- 一般的な粉末および固体の結晶構造解析、物質の同定
- 高温時における物質の反応、相変態、結晶構造の動的解析
主な仕様
X線発生装置 (ローターターゲット) |
出力9kW (回転式陰極:Cu) |
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光学系 | 集中ビーム系、平行ビーム系 |
2θ/θ測定範囲 | 4~164° |
測定温度 | ・白金ヒーター(大気、真空、不活性ガス) 連続:~1450 ℃ 短時間:~1600℃ ・タンタルヒーター 真空、不活性ガス:~1500℃ 大気:~400 ℃ ・タングステンヒーター 真空:~2300 ℃ |
雰囲気 | 大気、真空、不活性ガス(He、N2) |
試料寸法 | 10×10×1mmt程度 |
装置の説明図および写真
実績・その他情報
測定例1: 高温X線回折法を用いた熱膨張係数の測定
- 概要
- 試験条件
- 測定結果
通常、熱膨張係数は、ディラトメーターを用いて測定されるのが一般的で、高い精度で測定することが出来ます。ただ、バルク材に加工することや単相化することが難しい試料には適用出来ません。そのような場合は、高温X線回折法を用いて格子定数を測定することで熱膨張率を測定出来ます。
試みに、ZrO2の熱膨張係数の測定を行ってみました。
試料:ジルコニア粉末(試薬グレード)
ステップ間隔:0.01°
スキャン速度:10°/min
管電圧・管電流:45kV・200mA(9kW)
昇温速度:100℃/min
ヒーター:Pt
下図に、ZrO2の格子定数の温度依存性を示します。熱膨張係数は、下図の近似式の傾きより求められ、1.19×10-5(1/K)と見積られます。この値と文献値(1.16×10-5(1/K)*)とは良い一致を示します。
* R. N. Patil and E. C. Subbarao, J. Appl. Cryst. (1969). 2, 281-288
測定例2: 高温X線を用いた相転移現象の調査
- 概要
- 試験条件
- 測定結果
物質の高温状態での構造を知ることは、材料設計上、非常に有意義です。試みに、ZrO2の相転移を調べてみました。
試料:ジルコニア粉末(試薬グレード)
ステップ間隔:0.01°
スキャン速度:10°/min
管電圧・管電流:45kV・200mA(9kW)
昇温速度:100℃/min
ヒーター:Pt
状態図*によると、ZrO2の単斜晶系(T)から正方晶系(M)への相転移温度は1153℃と言われています。下記の結果でも、1200℃付近で単斜晶系から正方晶系への相転移が完了することが確認されました。
* H. Yokokawa, N. Sakai, T. Horita, K. Yamaji, Y. Xiong, T. Otake, H. Yugami, T. Kawada, and J. Mizusaki, J. Phase Equilib., 22 [3] 331-338 (2001)