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超高温材料のおはなし

(株)超高温材料研究センター/研究所
田中良平

An easy talk about“Ultra-high Temperature Materials”
Ryohei Tanaka
Japan Ultra-high Temperature Materials Research Institute

 From a view point of gloval environmental problems, strong demands to special materials for high temperature and high efficiency gas turbines for power generation have been emphasized. Nickel-based superalloys are excellent and most useful materials for these applications and have been well developed especially with the outstanding progress of jet engines. However, increasing of temperature capability of the superalloys will be limited because of their melting points which are lower than 1400 ℃. So-called ultra-high temperature materials, such as intermetallic compounds, refractory metals and alloys, ceramics, and various composite materials are expected to surpass the temperature capability of the superalloys, although these materials have several problems such as difficultiy of processing, lack of ductility and toughness or the poor resistance to oxidation and hot-corrosion. In this talk, present and future prospects of R & D of these ultra-high temperature materials will be briefly reviewed by easier terms.

Key words : gloval environmental problems, power generation, superalloys,intermetallics, refractory metals, ceramics, ceramic matrix composites,carbon/carbon composites, ultra-high temperature materials.

1.はじめに

 持続可能な21世紀の社会構築を考えるとき、もっとも重要なキ-ワードは「環境」と「エネルギー」であろう。この「環境」と「エネルギー」に対して、材料、とくに耐熱材料はきわめて重要な関わりを持っている。
 今日の環境問題でもっとも重要と考えられるのは、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出による地球の温暖化であり、その主な原因は、言うまでもなく化石燃料のぼう大な消費量である。化石燃料は有限であり、とくに石油や天然ガスの枯渇が目前に迫っているとは言え、風力を除いた再生可能な新エネルギーの開発が期待ほどには進まず、増加するエネルギー需要を賄うために、当分の間は主として化石燃料に頼らざるを得ない現実がある。
 ここではまず、エネルギー、とくに電力の安定供給に関連して、高温材料の重要性を述べ、次いでこれからの高温材料の開発について簡単な展望を試みることとしたい。

2.エネルギー需要と化石燃料

 18世紀後半の産業革命以降、石炭、石油、天然ガスなどの化石燃料の利用が急速に拡大し、今日の社会はまさに化石燃料によって支えられていると言っても過言ではない。しかし、化石燃料の消費がこのまま続けば、確認可採埋蔵量以外の未発見の資源量を考慮に入れても、 21世紀半ばから 22 世紀にかけて生産は減少に転じ、数百年以内に枯渇してしまうと予想されている。
 一方、地球温暖化の危険が大きく叫ばれるようになり、いわゆる地球温暖化防止京都会議(COP3)において二酸化炭素発生量の削減目標が決められるなどのエネルギーをめぐる情勢の変化に対応するため、「長期エネルギー需要見通し」の改定が1998年6月に行われた。その結論によれば、環境調和型エネルギー需要構造への転換、すなわち3Eの同時達成を目指すとしている。ここで3Eとは、1.経済成長(Economic development),2.エネルギー供給の安定 (Energy security),3.環境保全(Environmental protection)である。
 この達成のためには、最大限の省エネルギーをはかるとともに、原子力発電などの非化石エネルギーの相当規模の導入が必要となる。図1の電力供給目標では、原子力が総電力需要に占める割合は、1996年度の 34.6 %から 2010 年度では実に 45 %余りを期待しているが、果してそれが可能であろうか、むしろ困難とする見方も多いのではないか?
 この計画では、地熱・新エネルギーの割合は 2%に過ぎない。風力発電が計画以上に普及しつつあるが、それにしても総エネルギー量の 50 %近い部分は化石燃料に依存せざるを得ないのではないかと懸念される。
 一方、世界の長期エネルギー需給見通しについて、1999年春に米国エネルギー省(DOE) と国際エネルギー機関(IEA) とが相次いで発表したところによれば、エネルギー需要の伸びは 2010 年から 2020 年まで年率 1.8~2.0 %と見込まれている。

電力供給目標

 図2は両者による世界の地域別およびエネルギー源別の長期エネルギー需給見通し1)を示したものである。化石燃料消費については、IEA は石炭と天然ガスの構成比が僅かながら増加するとしているのに対して、DOE は天然ガスの構成比がかなり増加すると見ており、環境問題から石炭利用の拡大は困難で、むしろ減少するとしているが、いずれも世界全体では天然ガスにシフトせざるを得ないとの見方がなされている。また両者とも石油需要の急激な減少は予想していない。少なくとも 2020 年まで、最大の構成比を持つエネルギーとしての石油の位置づけは大きくは変わらないと考えられている点に注目したい。

世界の長期エネルギー需給見通し

 日本でも、長期的なエネルギー需給見通しでは、構造改革を行っても、石油は1997年の53.6%から 2020 年でも 46.1 %へ減少するに過ぎないとされている。
 これらの数字がそのまま実現するとは言えないにしても、現在の化石燃料依存型のエネルギー需給構造は、少なくとも 21 世紀の 20 ~ 30 年間はあまり変化しないと考えざるを得ない。
 それでは二酸化炭素問題をどうするか? 地球の温暖化をどう防ぐのか?
 今日、日本の二酸化炭素排出量の約 1/3 は発電分野であり、図3に見られるように運輸部門の20 %、民生部門の 11 %をはるかに超えて第1位となっている。
 二酸化炭素排出量の削減は、電力部門のみではなく、あらゆる産業部門に求められることはもちろんであり、また電力部門でも非化石燃料による発電システムの開発は急務ではあるが、図1に見られたように、水力、地熱を含めた新エネルギーに多くは期待できないこと、また原子力利用も新規立地等の問題のため大幅な増加は困難をともなうと予想されることから、火力発電における温暖化対策が急務であり、それには効率の高い火力発電システムの開発が現実的な解決策である。火力発電の高効率化は、温室ガスである二酸化炭素排出量を抑えるだけでなく、燃料の節約をはかることにもなり、将来のエネルギーセキュリティにも貢献することになる2)

二酸化炭素排出量の産業分野別構成

3.火力発電の高効率化と耐熱材料

 一般に火力発電では、運転温度を高めれば高めるほど発電端効率の向上が期待される。言い換えれば少ない化石燃料消費でより多くの電力が得られる場合が多い。耐用温度のより高い耐熱材料の開発に対する大きなニーズがそこにある。
 しかし現在の火力発電の中心は、過熱水蒸気のエネルギーを利用してタービンを回転させ発電を行う“蒸気火力”であるが、蒸気条件を 650℃-34.5 MPa(350 気圧) まで高めても、熱効率は 43 %程度までしか上昇させることができない。一方、ガスタービンは、それ単独では運転温度を 1000 ℃に高めても熱効率は 30 %にも届かないが、ガスタービンの高温排ガスのエネルギーを利用して蒸気タービンでも発電を行う複合サイクル発電では、タービン入口ガス温度を高めるほど、総合熱効率は大きく増加する。すでに日本で商業運転が行われている 1450 ℃級の超高温ガスタービンを含む複合発電の例では、50%〔高位発熱量基準〕以上が実現している3)4)
 この発電用ガスタービンは、航空機用のジェットエンジンが発電用に改良され、普及したものと言えるが、それらの心臓部に用いられる耐熱材料は、 Ni 基合金を中心とする超合金 (Super-alloys )であり、今日の高効率ガスタービンの発展は、それをもたらした様々な技術開発のなかでも、超合金の高性能化とそれによる耐用温度の上昇が大きな役割を果たしたと言えよう。

4.過去および現在の高温材料 超合金

 ジェットエンジン用の高温構造材料として、Ni基、Co基などのいわゆる超合金の開発が始められてから 60 年以上が経過し、その間に、耐用温度の高い合金が次々と開発されてきた。
 とくに Ni 基合金の進歩は目ざましい。多量のγ' 相と呼ばれる金属間化合物〔Ni3(Al,Ti)〕の析出・分散による強化の利用、母相γγ' の両相の固溶強化、また両相の組成の微妙なバランスによる結晶界面の原子配列の misfit 制御を考慮した合金設計手法の発展に加えて、真空溶解の採用、鍛造から精密鋳造への製造方法の転換、一方向凝固法の採用による等軸晶から柱状晶へ、さらには単結晶へという結晶制御を初めとするプロセス技術の進歩は著しいものがある。
 表1は主な単結晶超合金の化学組成を示したもので、初期の第1世代合金から、最近では第3世代と呼ばれる 5~6 %の Re を含む合金にまで開発は進み、第4世代合金も模索されている。一方、精密鋳造技術の発展によって動翼および静翼は中空構造の形に製造され、強制空冷が可能になったことと相まって、ジェットエンジンの運転温度は民間航空機でも離陸の最大出力時には 1500 ℃以上に達し、なお上昇の傾向が強い。しかし Ni 基超合金も Fe 基および Co 基の超合金に比べて明らかに優れてはいるが、1000℃では強度が著しく低下する。前記の第3世代超合金の一つである Rene N6でも、応力 138 MPa-1000 時間のクリープ破断寿命で規定した耐用温度はおよそ 1065 ℃程度である。 1500 ℃からさらに高温化しようとする発電用ガスタービンの運転温度にもほど遠い。冷却システムの革新、セラミック溶射による遮熱コーティングの進歩などによって、さらに 100~150 ℃の運転温度の上昇は可能としても、一層の高温化に対応するためには冷却の強化は避けられないし、冷却を強化すれば熱効率の上昇もやがて頭打ちになることは必至である。このように、超合金はもはや限界に近いと言わざるを得ない。

単結晶超合金の公称組成

5.超合金を超える超耐熱材料は?

 Ni 基超合金を超える耐熱性を備えた新たな超高温材料が待望されるところであるが、表2に分類するように、各種の金属間化合物、高融点金属の合金、セラミックス、セラミックマトリックス複合材料、 C/C 複合材料などが挙げられ、各所で研究開発が盛んに進められている。
 以下では、これらの開発動向を概観してみよう。

耐熱性が期待される材料

6.金属間化合物

 金属間化合物 (Intermetallic compounds,Intermetallics, 略して IMCs とも書く) の種類は非常に多いが、高温構造材料としては Al 化合物 (aluminide)と Si 化合物(silicide)が中心であり、なかでも軽量高比強度金属間化合物に分類される Ti-Al系と Ni-Al系に関する論文がもっとも多い7)
 金属間化合物は一般に硬く強いうえに、高温ではかなりの延性をもつものもあるが、ある温度域で延性-脆性遷移を示して常温では著しくもろくなるものが多い。
 このような脆性は、金属間化合物の宿命かと思われたが、1979年に微量ホウ素(B) の添加による Ni3Alの常温延性の画期的な改善8)が報告され、世界の注目を浴びるとともに、構造材料としての金属間化合物の研究開発に大きな希望と刺激を与えた。Ti-Al 系では TiAl(γ相) と Ti3Al (α3)相との複合組織化、第3元素の添加や加工熱処理の利用による組織の微細化など、多様な研究が進められている。この Ti-Al系をはじめとして、アルミナイド系の金属間化合物は、概して密度が小さく比強度の点で有利である。とくに TiAl は密度が 3.8、超合金の 1/2 以下であるため、比強度では超合金より優れているが、実用上の耐用温度は 750℃程度と見られる。
 Ni-Al 系では、Ni3Al が前述のγ' 相としてNi基超合金の高温強度の改善に大きな役割を果たしてきたため研究は多く、また NiAl はジェットエンジンに試験的に用いられるまでに期待されたが、実用には至っていない。さらにこの系統の金属間化合物は超合金を大きく超える高温での使用には耐えられそうもない。
 これらの理由から、超高温材料としては高融点金属間化合物に期待が掛けられる。そのうちNb3Al は融点が約 1960 ℃、密度が比較的小さく、航空・宇宙飛翔体の構造材料用に 1800 ℃の高温まで利用できる可能性があるとして、超耐環境性先進材料プロジェクトでも研究されたが、高温強度、延性および耐酸化性のいずれの点でも問題が残されている。
 他方、MoSi2 は耐酸化性に優れ、かなり以前から電気炉の発熱体として 1700 ℃付近までの使用実績は多い。また高温強度の点では、超合金が 1000 ℃以上の温度で強さが急速に低下するのに対し、MoSi2 は図4に見られるようにそれ以上の温度であたかも超合金の低温側から高温まで延長した値に匹敵する強さを維持し、Crや Re などの合金元素の添加や NbSi2との複合化によって、高温強度や加工性が改善されることも見い出されている。しかし回転部品としての目標強度にはまだ達しておらず、脆性の克服も困難なために実用化の見通しは立っていない。

単結晶超合金PWA1480のクリープ比強度の比較

7.高融点金属とその合金

 W, Mo, Ta および Nb の4金属は実用性が比較的大きく材質的にも共通点が多いので、高融点金属あるいは耐火金属( Refractory metals)と総称されている。表3には、これら4金属に Crを加えて各種の特性を比較した。融点が高いことは高温まで安定な固体として存在できるという、高温材料としてもっとも重要かつ本質的な特性であり、同時に結晶内における原子間結合力が高温まで十分に大きい、つまり高温強度が大きいことを示す指標でもある。表3の各金属は、いずれも超合金よりはるかに高い温度までかなりの強度を維持し、W合金に至っては 1760 ℃でも超合金の 1100 ℃の強度に近い値を示すが、それぞれに短所もある。とくに Mo と Wは延性-脆性遷移温度が 0℃より高く、ある温度以下で急に脆化する。それらに対し Nb と Ta は常温まで十分に延性が保たれ、耐酸化性の点ではコーティングが不可欠としても Mo や Wよりは優れている。

合金、超合金の比較

 とくに Nb は、上記4金属のなかではもっとも融点は低いが、 Ni 基超合金に比べればまだ 1000 ℃余りも融点が高い。またその融点は Ta ほどに高くはなく、種々の特長を備えており Ni 基超合金に代わる今後の高温構造材料として有望である。このような観点から、Nbベースの超高温材料の研究が進められている6)。その圧縮降伏強さ10)から比強度を算出し、他の高融点金属系材料および Ir 系超合金の Ir-Zr,Ir-Nb,Ir-Hf 合金 (各 15 at%添加) のデータ11)と比較して図5に示した。
 Nb 系の開発合金は固溶強化のみの最適組成の探索をほぼ終了し、析出・分散強化との組み合わせによる合金設計の研究と、拡散バリヤーを配置した多層コーティングによる耐酸化性改善手法の開発が進んでいる。ただ、融点が Ni 合金より 1000 ℃も高いことから、合金部材の製造方法の確立にはまだ問題が残されている。
 この Nb に対して Cr の合金は融点が 2000 ℃より低いが、それだけ部材製造も容易であり、密度も小さく、高純度化によって常温延性も得られることから研究が始められている12)

各種高温材料とNb基開発合金の比強度の比較

8.セラミックス

 代表的な高温構造用のセラミックスとしては炭化ケイ素 SiCと窒素ケイ素 Si3N4がよく知られている。いずれも共有結合性が強く、高温強度が大きいため、セラミックスガスタービンの開発プロジェクトでの材料設計と部品化技術では、適用部位に応じて SiCと Si3N4の使い分けが考えられ、もっとも高温で耐熱性が要求される燃焼器、尾筒のライナには SiCを中心に、また損傷許容性の要求される第1段の動翼と静翼には Si3N4を中心にして材料開発や材質改善がはかられてきた13)。両者の高温強度特性は、最近の20年ほどの間にかなり向上したが、とくに Si3N4の高温強度や破壊靱性の改善には著しいものがある14)
なお SiCと Si3N4はともに、高温で Si の酸化に十分な酸化ポテンシャルをもつ環境では、表面に SiO2 皮膜を生成してすぐれた耐酸化性を示すが、酸素ポテンシャルの低い環境では、蒸気圧の高い SiOとなって揮散する。Si3N4 自体も 1900 ℃付近で解離する。
 一方、酸化物系セラミックスは一般にイオン結合性が強く、低温では極めて硬く弾性率も大きいが、高温では塑性変形が容易となり強度の劣化するものが多く、概して耐用温度は非酸化物系より劣る。また靱性改善のため、セラミックス繊維による複合化などの開発が行われている。
 それらに対して、2種類の酸化物を共晶組成に配合して、溶融・一方向凝固による組織制御を適用すれば、同じ組成の焼結材料に比べて著しく強度の高くなることが見いだされている15)。この共晶セラミックスの一方向凝固材は、 MGC (Melt Growth Composite) 材料と名付けられているが、共晶を構成する2種類のセラミックス相がそれぞれ単結晶として凝固成長していることがX線解析によって確かめられている。しかもその両相が単結晶のまま互いに絡み合って存在するとという極めて特徴的な組織形態を示しており、また、その両相の界面は整合とは言えないまでも、当然のことながらガラス相は認められない。
 α-type と名付けられている Al2O3-YAG系 (YAG は Y2O3 と Al2O3の複合酸化物でガーネット構造を持つ) の例では、図6に見られるように常温の曲げ強さ約 380 MPaが共晶温度 (約 1820℃) の直下である 1800 ℃までほとんど低下せず、しかも優れた高温耐酸化性、低密度などの物理的性質のほか、1700℃の大気中で 1000 時間保持しても組織や強度の変化が認められないという、優れた熱的安定性を備えており、超合金をはるかに超える耐熱特性を有していると言える。

高温曲げ強度の比較

 圧縮クリープ試験の結果から単純に比較すると、α-type MGC 材料は超合金よりもおよそ 500℃高い温度まで使用できることになる。しかもこのα-type は密度が 4.2 g/cm3であり、 Re を 6%ほども添加されたいわゆる第三世代の単結晶 Ni 基超合金の8.89~9.05に比べて 1/2 以下であることから、強度の密度に対する比として求 1600 ℃でめられる比強度で比べれば、α-type の MGC材料は超合金よりほぼ 600℃高い温度で使用できることになる。さらに Al2O3-GdAlO3 系では 1600 ℃でα-type の 1.7倍に当たる約 700 MPa17), Al2O3-YAG-ZrO2 の3元系 MGC材料では 800 MPaという優れた強度特性が得られている18)

9.複合材料

  金属マトリックスの複合材料(Metal Matrix Composite, MMC)の研究開発は、現在のところマトリックスとして、Al合金、Ti合金、金属間化合物 TiAl などを用いたものが中心であり、いずれも 1000 ℃以上での使用は困難である。
 ここではセラミック基複合材料と C/C複合材料について簡単に展望することとしたい。

9.1セラミック基複合材料(Ceramic Matrix Composite, CMC )

 SiC や Si3N4などのモノリシックセラミックスは、金属材料と比較して耐熱性、耐酸化性は非常にすぐれているものの、破壊靱性や耐熱衝撃性が低く信頼性に劣る。とくに切り欠きや衝撃による破損が潰滅的な破壊につながる危険性の高いことは否定できず、健全性に要求される損傷許容性は一般に乏しい。このような問題を解決するために CMCの開発が盛んに行われている。
 CMC は、連続繊維やウィスカによる繊維強化型とナノ構造制御による粒子分散型の二つに大別されよう。とくに SiC長繊維を組み合わせれば破壊靱性は著しく向上するため CFCC(ContinuousFiber Ceramic Composites) と呼ばれる。強化用の SiC長繊維としては、日本で商品化されたニカロン( Nicalon ) とチラノ( Tyranno ) が世界的に有名であり、代表的なものである。最近では、電子線照射による不融化技術の開発などにより、1600℃まで熱劣化の小さい商品が開発され、製造上あるいは使用上での雰囲気の自由度を考慮すると、炭素繊維に勝る状況である13)
 高靱性を発現する CFCC では、き裂が発生しマトリックス中を進展しても、繊維がマトリックスと同時に破壊することなく、き裂をブリッジングする機構をともなうことが必要である19)。そのため、CFCCの製造にあたっては、繊維とマトリックスの界面の制御が重要であり、繊維表面への炭素コーティングや BN の CVD(化学気相蒸着)コーティングなどが研究されている。

9.2炭素/炭素複合材料(Carbon/Carbon Composite, C/C 複合材料)

 炭素の同素体の一つである黒鉛は、密度が2.26、特定の融点を示さず、常圧のもとでは3800℃以上で固体から気体に昇華する。また、一般の炭素材料の常温引張強さは 5~20 MPaに過ぎないが、炭素材料の強度の大きな特徴は、 2500 ℃付近まで温度上昇とともに強くなることである。
 一方、炭素繊維は、比較的低温で焼成した PAN系の高強度タイプ (引張強さ:7 GPa以上) や高温で黒鉛化させたピッチ系の高弾性率タイプ (弾性率:800 GPa) のような力学特性のきわめて優れたものまで開発されている。
このような炭素材料の特徴を超高温材料に利用する目的で、いわゆる C/C コンポジットの開発が進められている。 C/C ではまず、炭素繊維を必要な形状に配列するか、または織物の形にしなければならない。炭素繊維を織物状に編み上げることは比較的容易であるが、2次元的な平板状のみにとどまらず、立体的な3次元構造などの複雑な形状のものまで製造されている。マトリックスの前駆体 (プリカーサ) としては、一般にピッチなどの熱可塑性樹脂やフェノールなどの熱硬化性樹脂が用いられる。これらを炭素繊維のすき間に含浸させ、次いで炭素化・黒鉛化して C/C コンポジットとする。この炭素化にともない揮発性成分が除かれて多孔質となるため、含浸と焼成を繰り返し、できるだけ緻密な材料に仕上げなけれならない。
 このような方法のほか、CVD で織物中に直接炭素を沈積させる CVIなどの方法もある。いずれにしても C/C コンポジットの製造には一般にかなりの期間が必要であり、必然的に高コストとなる。しかし C/C 複合材料は、気孔を皆無にはできないため密度が2以下であり、しかも強度が高温域まで落ちないので、図7のようにほかの材料に比べて高温比強度が抜群に優れている。すでに超音速旅客機コンコルドなどの航空機のブレーキ材料として採用され、またスペースシャトルのノーズキャップ、リーディングエッジなどとしても用いられている。
 2000 ℃以上に耐えることが要求される宇宙開発関係では、いわゆる先進複合材料の中心をなすものとしてもっとも期待されている。

C/C複合材料と他の材料との高温比強度の比較

 しかし、耐酸化性に大きな問題があり、コーティング手法の開発が超高温材料としての C/C開発の死命を制すると言っても過言ではないであろう。

10.将来への展望と課題

 地球規模の環境・資源問題がクローズアップされている。限りある資源の化石燃料を節約し、併せて二酸化炭素の発生量を削減して地球環境の保全に役立てることを目的に、蒸気タービンと組み合わせる複合発電用のガスタービンの高効率化がはかられている。それにはタービン入口温度の上昇は不可欠である。
 クリーンなエネルギー源として大きな期待が寄せられている'水素'。この水素を純酸素で燃焼させれば二酸化炭素の放出は皆無、窒素酸化物も出ない、発生するのは水蒸気だけ、という理想的なガスタービン発電の開発という構想もある。その熱効率を可能な限り高めようと思えば,ここでも超高温材料が必要である。
 夢の原子炉と呼ばれる核融合炉も、またしかり。 耐熱材料は、このような環境問題、資源・エネルギー問題の解決に大きな役割を果たすことが期待される。
 しかし超合金は、すでに限界に近いとは言え、長年の技術開発の成果に支えられて非常に優れた材料に成熟している。融点が十分に高くないため 1000 ℃以上では強度が低下し、耐酸化性・耐高温腐食性も十分ではない、とされながらも、タービン部品の冷却構造あるいはコーティング、その他さまざまな技術の進歩によって、その融点を超える高温の燃焼ガス環境でも使用される。
タービンの運転温度はさらに上昇する傾向にある。すでにタービン入口温度 1450 ℃~ 1500℃級、単体出力 230 MW ( 60 Hz 機) の発電用ガスタービンは商用運転に投入されている4)が、動翼、静翼などが超合金製であることは言うまでもない。
 そのような超合金に対して、それを超える耐熱性を備えた超高温材料の研究開発はまだ初期の段階である。超合金の製造プロセスの主流となっている溶解・精密鋳造、あるいは溶解・鍛練/圧延といった手法は、同じ金属系材料であっても、金属間化合物や高融点金属の合金には適用しにくい場合も多い。セラミックスや各種の超高温用複合材料を含め、要求されるNear Net Shapeの構造物や部品をどのようにして製造するのか、その過程で必要となる超高温をどのようにして得るのか、それらの材料をどう試験・評価し、高温構造設計の手法とかみ合わせて、用途に適合した信頼性をどう確保するのか、等々、問題は山積している。
 また、本講演では金属系、セラミックス系、および複合材料について開発動向を述べたが、これらの材料は必ずしも競合材料というわけではない。単にガスタービン材料と称しても、部品の温度は常温から超高温までの広い範囲にわたり、しかも静止部品もあれば回転部品もある。そのため、いろいろな材料がそれぞれの特徴に応じて適材適所に使い分けされることになろう。

引用文献

 1) 小川芳樹:Tekkohkai (1999-10), p.4.
 2) 内山洋司:エネルギー・資源、20(1999), p.151.
 3) 梅村 直,佃 嘉章,秋田栄司,赤堀弘一,岩崎洋一:三菱重工業技報、34, No.4(1997-7), p.225.
 4) 佃 嘉章,秋田栄司,岩崎洋一,川田 裕,塚越敬三:火力原子力発電,51-No.525(2000), p.685.
 5) G.L.Erickson:Superalloys 1996, Ed. by Kissinger et al.,p.35〔The Minerals, Metals and Materials Society 〕(1996), p.35 (抜粋).
 6) 田中良平:超高温材料国際シンポジウムXI(宇部) (1997 年 5月), p.1.
 7) 花田修治:金属間化合物共同研究会編, 金属間化合物-新高温構造材料としての可能性-,(1992),第2章, p.41〔日本金属学会〕.
 8) 青木 清, 和泉 修:日本金属学会誌, 43(1979), p.358.
 9) D.L.Anton and D.M.Shah: Proc.Intnl.Symp.on Intermetallic Compound Structure and Mechanical Properties (JIMIS-6), Ed. by O.Izumi (1991, Sendai), p.379.
10) 笠間昭夫, 田中久男, 宮村 紘, 田中良平, 桝本弘毅:日本金属学会秋期講演大会講演概要集 (1997), p.414.
11) 御手洗容子, 小泉 裕, 村上秀之, 呂 芳一, 丸子智弘, 原田広史:学振耐熱金属材料第123委研究報告、37(1996), p.197 ;金材技研ニュース,(1997年 4月).
12) 超高温材料研究所:高延性クロム合金の開発〔NEDO委託による研究基盤施設活用型先導的基礎研究調査事業平成 11 年度 (2000年 3月) および同 12 年度報告書 (2001年 3月〕.
13) 岡部永年:日本機械学会誌, 99(1996), No.929, p.275.
14) 吉田 真:新素材, 4 (1993), No.9, p.51; 吉田 真, 田中広一, 鶴薗佐蔵:セラミックス34(1999),No.12, p.1005;吉田 真:日本ガスタ-ビン学会誌, 28(1993), No.6, p.45.
15) 和久芳春, 中川成人, 大坪英樹, 大空靖昌, 神徳泰彦:日本金属学会誌, 59(1995),p.481;和久芳春:超高温材料シンポジウムⅨ(宇部)(1995年 6月), p.51.
16) Y.Waku, N.Nakagawa, H.Ohtsubo, A.Mitani and K.Shimisu :J.of Materials Science, 36No.7(2001), p.1585.
17) Y,Waku, N.Nakagawa, T,Wakamoto, H.Ohtsubo, K.Shimizu and Y.kohtoku:Nature, 389 (1997), no.6646 (4 Sept.1997),p.49.
18) 和久芳春:私信(2001年 5月).
19) 落合庄治郎, 北条正樹:まてりあ, 33(1994), p.1397.
20) 香川 豊: C/C 複合材料, 新素材, 2(1991),No.3, p.48 ;私信 (1999年 4月).

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